夏の暑さ対策グッズとして人気の扇子。優雅に扇ぎながら涼をとる姿は上品で憧れますよね。最近では100円ショップなどでも購入できるのでより身近なアイテムになってきた扇子ですが、実は正しく使えている方はそれほど多くありません。
今回は扇子の選び方や使い方のマナーについてご紹介します。正しい使い方をマスターして、夏の暑さを快適に乗り切りましょう!
扇子の種類・選び方
用途別に選ぶ
扇子には用途によっていくつか種類があります。一般的に扇子と呼ばれているのは「夏扇子」で、その他の扇子は基本的に扇いで使うものではないので注意が必要です。
夏扇子(なつせんす)
涼むために扇いで使う、最もポピュラーな扇子です。見た目の柄も涼しげなものが多くあります。女性用は男性用に比べてやや小さめの作りとなっていますが、7寸(約21cm)の扇子は男女ともに使いやすい大きさです。「夏」という言葉が付いているものの、夏に限らず一年通して使っても全く問題ありません。
舞扇(まいおうぎ)
演舞の舞台用の扇子であり、扇いで使うことはありません。遠目からもよく見えるように大きめな作りになっていて、舞扇の一般的な大きさは夏扇子の男性用よりも大きい9寸5分(約29cm)です。能楽で使う「能扇(のうおうぎ)」、インテリアとして飾る「仕舞扇(しまいせん)」などがあります。
茶扇子(ちゃせんす)
茶道の席で挨拶のための小道具として使われます。基本的に広げることはなく、自分の前に置いて相手への敬意を表すため、また自分と相手の境界を作る「結界」としての役割を果たします。茶扇子は夏扇子に比べて小さめの作りで、一般的な大きさは5寸(約15cm)程度です。
祝儀扇子(しゅうぎせんす)
結納や結婚式など、特別なお祝いの席で使われる扇子です。立場・性別・和装か洋装かなどによって異なる絵柄や色味を使い分けます。金・銀の扇面に黒い骨組みが一般的ですが、洋装の男性用に「モーニング扇子」と呼ばれるものもあります。
高座扇子(こうざせんす)
落語の高座で箸や釣り竿などの「モノ」に見立てるための小道具として使われます。無地の白やベージュなどシンプルなものがほとんどです。夏扇子よりも頑丈な作りになっており、閉じるときにはパチン!と良い音がします。
素材で選ぶ
紙扇子
骨組みの両面に紙が貼ってある構造なので、どちらの面から見ても骨が見えず見栄えが良いです。布扇子に比べると風を強く感じることができますが、日焼けや破れなどができやすく耐久面では劣ります。
布扇子
紙扇子より汚れが付きやすい、片側からは骨組みが見えてしまい見栄えが良くないなどのデメリットはありますが、扇面の柄が豊富で紙扇子より耐久性も高く、普段使いに向いています。
生産地・デザインで選ぶ
京扇子
京扇子は京都・滋賀を中心に作られ、国内で最も多く流通している扇子です。ルーツは古く平安時代にあり、当初は扇ぐためのものではなく高貴な身分の人が顔を隠すために使われていました。見た目の柄や装飾が華やかなものが多くあります。
骨の数は25~35本程度、多いものだと60本というものもあり、骨の数が多いほどしなやかで良い風がきます。
江戸扇子
京扇子に比べて骨の数が15~18本と少なく、デザインもシンプルなものが多いです。武士社会では茶室で刀の代わりに持って入り、敵意がないことを表すために使われていたそうです。
京扇子は各製作工程が分業化されていて複数の職人で請け負いますが、江戸扇子は30近い全ての工程を一人の職人でこなします。
扇子の正しい使い方
扇子は普通に扇げば風が来るものですが、「正しい使い方」は意識しないと難しいものです。扇子の寿命にも関わってくるところなので、しっかりおさえておきましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=AFbZ5sKuTVE
持ち方
実は男性と女性で持ち方が違います。一番わかりやすい違いは「相手に親指が見えるかどうか」。慣れないうちはちょっと難しいですが、マスターできるとより優雅な扇ぎ姿になりますよ。
男性の場合は四本指で要(=骨の根本をまとめた金具の部分)を握り「親指が相手に見えるように持つ」のが正しい持ち方です。
女性の場合は親指で要や骨の部分を挟むようにし、他の指を伸ばして「手の甲が相手に見えるように持つ」のが正しい持ち方です。
開き方
1.扇子の親骨(=一番外側にある太い骨)が上に来るようにします。左手で下から支え、右手で上の親骨を持ちます。
2.左手の親指を使い、上の親骨から順に押し出すように開きます。少し開いたら両手でゆっくりと広げていきます。このとき一気にバッと広げると扇子を痛めてしまうので、ゆっくり丁寧を心がけましょう。
3.最後の2,3本は開ききらず残しておきます。最近ではあまり気にする人はいませんが、「月満つれば則ち虧く(=満月が必ず欠けるように、物事は盛りに達すれば必ず衰え始める)」という言葉から、全開にしない方が良いとされています。
閉じ方
折り目に沿ってひとつひとつ丁寧に畳んでいきます。一気に閉じてしまうときれいに畳めなかったり、折り目に変な癖が付いてしまったりします。開くときと同じくゆっくり丁寧にするのがポイントです。
持ち歩くときは扇子袋に入れる
和服の場合は帯にさすことができますが、カバンなどにしまって持ち歩く場合は専用の扇子袋に入れましょう。扇子はとても繊細なアイテムなので、他のものと接触すると扇面の破れや骨の破損につながります。
下品に見えないために。扇ぎ方のマナー
優雅な暑さ対策グッズとして人気の扇子ですが、使い方次第で下品に見えてしまったり、周りの迷惑になってしまったりすることがあります。マナーを守って上品に使いこなしましょう。
周りの人に風が当たらないように
公共の場で使うときは、扇子の風が自分以外の人に当たらないよう「扇面が体と平行になるように持ち、胸の下あたりから自分の顔に向けて」扇ぐようにします。風と一緒に汗のニオイをまき散らすのを防ぐためです。
浴衣などの和服を来ている場合は袖口から風を送り込むようにするとより涼しく感じられます。
パタパタ忙しなく動かさない
暑いからと言ってパタパタと動かすのは見た目が下品に見えるだけでなく、周りに風が届いてしまうためNG。静かにゆっくり扇ぎましょう。
香りを楽しむ場合はつけ過ぎやTPOに気を配る
扇子の中には「白檀(びゃくだん)」などの香木を使ったものがあり、香水や匂い袋で香りを付けて楽しむ人も多くいます。しかし、香りの強さや種類によっては周りの人を不快にさせてしまうことも。特に食事をする場では香り付きの扇子の使用は控えるようにしましょう。
扇子のお手入れ方法
扇子は使うとき丁寧に扱うのとあわせて、使い終わった後のお手入れに気を配ってあげるとより長く使うことができます。汚れや破れができてしまうと自力で修復するのは難しいため、こまめにお手入れをしてきれいな状態が保てるようにしましょう。
使い終わったあとのメンテナンス
汗や雨で濡れてしまっている場合はしっかり水分を拭き取り、通気性のよいところで陰干ししましょう。水気が残ったまま放置するとカビや型崩れの原因となります。直射日光が変色や骨の割れにつながる可能性があるため、日が当たる場所には置かないようにしてください。
また、手で触れる骨部分には手垢などの汚れがついていますので、ぬるま湯やアルコールを含ませた布で軽く拭いてあげると良いでしょう。
保管方法
シーズン終わりに長期保管する場合は「しめ紙」を使いましょう。しめ紙は扇子の購入時に付属しているのが一般的です。しめ紙を巻くことで型崩れを防ぎ、スムーズに開閉できる状態を保つことができます。もしも手元にない場合はメモ紙などを適度な大きさに切ってくるっと巻いておきましょう。
高温多湿・直射日光を避け、家の中でも気温や湿度の変化がなるべく少ないところにしまいます。乾燥剤を使う場合はシミが付くのを防ぐため、扇子に直接触れないように置き方を工夫しましょう。
このとき扇子袋や通気性の良い布(ハンカチなど)に包んでしまっておくと、他のものにぶつかったり引っかかったりして破損するのを防ぐことができます。
さいごに
扇子の選び方や使い方についてご紹介しました。正しく使えている人は多くないからこそ、優雅な扇ぎ姿は憧れの的となるでしょう。