葬儀の際にお香典をいただいたら、「香典返し」としてお返しの品を送ります。日頃経験する機会が少ないこともあり、何を・いつ・どのように送ればいいのか悩むこともあるでしょう。今回は「香典返し」の基本的マナーと、品物に添えるお礼状(挨拶状)の書き方や例文をご紹介します。
香典返しを送る時期

香典返しには、香典をいただいたことへの感謝に加えて、弔事を滞りなく済ませたことを報告する意味合いもあります。そのため、香典返しは故人の四十九日法要を済ませたタイミングで送るのが一般的です。具体的には「四十九日法要が終わってから2週間以内」に先方に届くように手配しましょう。
ただし、葬儀に参列できない方から弔電と一緒に香典もいただいた場合、お返しは「弔電へのお礼」も込めて葬儀後なるべく早く送る必要があります。香典返しに添えるお礼状(挨拶状)には、弔電と香典の両方をいただいたことへの感謝を書きましょう。弔電へのお返しマナーについてはこちらをご参照ください。
忌明けのタイミングが年末で、年内に香典返しを届けるのが難しい場合は急がなくてもかまいません。元旦から1/7までは「松の内」といい、年始を祝うおめでたい期間です。松の内の期間中は慶事にあたるため、松の内を過ぎてから先方に届くように手配しましょう。
香典返しにかける金額相場

香典返しは「半返し」が一般的で、いただいた香典の半額程度が目安となります。ただし、親族から相場を大きく上回る高額な香典をいただいた場合「半返し」はふさわしくないこともあるので注意しましょう。
親族からの高額な香典には、今後の生活を援助する気持ちが込められていることが多く「お返しはいらないよ」と言われることもあります。このような場合は、相場通りの半返しではなく、ご厚意に甘えて1/3~1/4程度にとどめるのがベターです。
また、亡くなったのが一家の働き手だった場合や未成年の子どもがいる場合は、香典返しを省略しても良いとされています。ただし、香典返しをしない場合でもお礼状は必ずお送りするようにしましょう。
香典返しにふさわしい品物

香典返しの品物は「不祝儀を残さない」という考えから、食べたり使ったりするとなくなる「消えもの」を送るのが定番です。お茶やコーヒー、お菓子などの食品のほか、洗剤やタオルなどの日用消耗品も喜ばれるでしょう。
「消えもの」以外では、あえて形に残る陶磁器や漆器を送ることもあります。陶磁器には「故人が土に還る」漆器には「不幸事を塗りつぶす」「二度と不幸がないように色直しをする」といった意味が込められているため、マナー違反にはなりません。
近年では「もらって嬉しい香典返し」としてカタログギフトも人気を集めています。先方の宗教や好みに合わせて1点ずつお返しを決めるのは大変ですが、カタログギフトなら予算に合わせて選べるコースが豊富なのが大きな魅力。先方が本当に欲しいものを自由に選べるのも人気の理由のひとつです。
- 日持ちするお菓子
- お茶、コーヒー
- 海苔
- 調味料
- 洗剤
- タオル
- 石けん
- 陶磁器
- 漆器
- カタログギフト
香典返しにはタブーな品物

生肉や生魚などは「四つ足生臭もの」と呼ばれ、殺生を連想することから香典返しにはふさわしくないとされています。お酒などの嗜好品や、お祝い事によく用いられる鰹節、昆布などもNG。たとえ先方の大好物であったとしても、香典返しとして送るのは避けるようにしましょう。
ただし、肉や魚などのNGギフトも先方にカタログから選んでもらうのであれば失礼にはあたりません。「マナーや定番に左右されず、先方が本当に好きなものを送りたい」という方はカタログギフトを選ぶといいでしょう。
- 肉や魚などの生もの
- アルコール類
- 鰹節や昆布などの縁起物
- 日持ちしない食品(生クリームを使用したお菓子など)
- 華やかなパッケージのもの
香典返しの「熨斗(のし)紙・掛け紙」の書き方
香典返しには、弔事用の「掛け紙」が必要です。贈り物によく使われる「熨斗(のし)紙」との違いも含めて書き方のマナーを解説します。
「熨斗(のし)紙」は香典返しには不向き

「熨斗(のし)」とは、本来慶事の贈り物に添える「熨斗鮑(のしあわび)」を指す言葉です。現在では本物の熨斗鮑ではなく、掛け紙にのしマークを印刷した「のし紙」が主流となっています。
ただし、香典返しなど弔事に関する贈り物には「のし」を付けないのがマナーなので注意しましょう。香典返しには、のしマークが印刷されていない「掛け紙」を使います。
香典返しの「掛け紙」の書き方

水引は「黒白の結びきりまたはあわじ結び」を選び、表書きは「志」または「満中陰志」とします。「志」は宗教や地域を問わず使用できるためおすすめです。
表書きの下には差出人名を書きましょう。一般的には喪主の苗字のみですが、関西地方ではフルネームで書くことが多いようです。喪主と故人の苗字が違う場合は、故人の苗字で「〇〇家」、喪主とは別に施主がいる場合は連名(喪主が右、施主が左)で記載しましょう。
「香典返し」と「満中陰志」の違い
「香典返し」と「満中陰志(まんちゅういんし)」は、言葉が違うだけで同じものを指します。「満中陰志」と呼ぶのは主に関西地域で、「満中陰」は全国的に「四十九日」と呼ぶ期間です。
関西地域では表書きに「満中陰志」がよく用いられますが、全国的に一般的なのは「志」です。また「中陰」は仏教用語であるため、神道やキリスト教の方にはふさわしくありません。あえて「満中陰志」を使う場合は、先方の宗教や地域の風習に合っているか確認しましょう。
香典返しに添えるお礼状(挨拶状)の書き方
香典返しはいただいた香典に対するお礼だけではなく、弔事を無事済ませたことの報告も兼ねています。そのため、香典返しの品物には必ずお礼状(挨拶状)を添えるのがマナーです。具体的な内容や書き方の注意点について見ていきましょう。
いただいた香典へのお礼
いただいた香典に対するお礼の言葉を忘れずに盛り込みます。とくに故人と親しかった方には、定型文だけではなく故人のエピソードや共通の思い出話などを書いてもいいでしょう。
法要が済んだことの報告
「四十九日の法要を滞りなく済ませることができました」など、無事に法要が終わったことの報告をします。仏教において、故人の命日から四十九日目を「忌明け」といい、喪の期間が一区切りするタイミングです。忌中の法要をひと通り済ませ、日常生活に戻ったことを報告する意味合いがあると考えるといいでしょう。
「忌み言葉」「重ね言葉」に注意
冠婚葬祭のメッセージでは、不幸を連想させる「忌み言葉」と、不幸が繰り返し起こることを連想させる「重ね言葉」を使うのはNGです。特に「重ね言葉」はうっかり使ってしまいがちなので注意しましょう。
終わる・絶える・別れる・切れる・欠ける・冷める・四(死)・九(苦)等
たびたび・しばしば・重ね重ね・いろいろ・たまたま・わざわざ・等
句読点は使わない
句読点は「(人間関係の)区切り、終わり」を連想させるため、冠婚葬祭のメッセージでは使わないのがマナーです。文字が長く続いてしまうときは、句読点の代わりに一文字スペースを空けたり改行したりして読みやすくします。
略儀にしたことのお詫び
本来であれば、香典のお礼は直接訪問して伝えるのが礼儀とされています。書面でのお礼は「略儀」に当たるため、そのことに対するお詫びをひと言書き添えましょう。
香典返しのお礼状(挨拶状)の例文
上記でご紹介した書き方をもとに、いくつか例文をご用意しました。例文を参考に、先方との関係性などを考慮しつつ作成してみてください。
先般 父〇〇の葬儀にご参列いただき誠にありがとうございました
過分なお心遣いをいただきましたこと 厚く御礼申し上げます
おかげさまにて四十九日の法要を無事済ませることができました
つきましては供養のしるしとして心ばかりの品をお送りさせていただきます
本来であれば直接ご挨拶にお伺いするべきところ
略儀ながら書中にてご挨拶申し上げます
敬具
母〇〇儀 葬儀に際しまして
鄭重なるご芳志を賜り厚く御礼申し上げます
お蔭をもちまして四十九日の法要を滞りなく相営むことができました
生前に故人が賜りましたご厚誼にあらためて感謝申し上げます
心ばかりの品ではございますが
供養のしるしとしてお送りいたしますのでご受納くださいませ
本来ならば直接ご挨拶を申し上げるべきところではございますが
書中をもちましてご挨拶とさせていただきます
謹白
祖父〇〇儀 葬儀に際しまして
ご懇篤なるお心遣いを賜りまして誠にありがとうございます
お陰さまにて葬儀も滞りなく執り行うことができました
ここに故人が生前賜りましたご懇情に謹んでお礼申し上げます
つきましては 供養のしるしとして心ばかりの品をお送りいたしますので
ご受納いただければ幸いです
本来であればお伺いしてご挨拶申し上げるべきところですが
略儀ながら書中にて御礼申し上げます
敬白


