親しい人の病気療養や入院の知らせを聞いたら、一刻も早くお見舞いに行きたくなるものです。しかし、お見舞いはただ行けばいいものではなく、お相手の心情や都合に配慮して行動しなければいけません。今回はお見舞いに伺うときの基本マナーから、お見舞金の包み方、お見舞いの品の選び方などをご紹介します。
お見舞いに行くべきではないNGシーン

病気が発覚したり入院したりした直後は、体も心もデリケートになってしまっていることがあります。場合によっては、相手の体調や気持ちが落ち着くまで時間がかかることも。お見舞いに行ってもよいかどうか、事前にご本人や家族の方に確認しておきましょう。次のようなケースでは、お見舞いに行くのを避けるか、日を改めるのが無難です。
手術の前後2~3日
手術の前後数日間は容態が不安定だったり、痛みや不快感でナーバスになっていたりする場合があります。手術前に訪問する場合は直前にならないよう時間に余裕を持って、手術後の場合は体調が回復した頃を見計らって4~5日後を目安にメールなどで連絡をしてみましょう。
お見舞い相手の免疫機能が下がっている
病気の症状や薬の副作用によっては、お相手の免疫機能が著しく下がってしまっていることがあります。健康な人ならまったく問題が起こらないような細菌・ウイルスでも、免疫機能が低下している状態で感染してしまうと重症化しやすく、最悪の場合命に関わることも。
お見舞金やお見舞いの品をどうしても渡したいときは、面会での手渡しではなく配送でご自宅などにお届けするのがおすすめです。
本人または家族が拒否している
「弱った姿を見られたくない」「長いこと入浴できていない」といった理由で、ご本人やご家族に面会を断られることもあります。「そんなのこっちは気にしないから」などと言って無理やり押しかけたりせず、お相手側の意思を尊重しましょう。
お見舞いに行くときの基本マナー

お見舞いに行くことが決まったら、お相手のことを第一に考え、基本的なマナーを守って行動することが大切です。面会の前後は、次の5つのポイントを意識して行動しましょう。
- 事前に日時の連絡をする
- 面会時間は短めに
- 面会人数は4人まで
- 会話の内容にも配慮を
- 相手が眠っていたら起こさない
事前に日時の連絡をする
お見舞いに行く前に、必ず訪問する予定の日時を伝えておきましょう。自分が行こうと思っていた日時に他の面会者が来る予定がすでに入っていたり、病院側で面会時間に規制を設けていたりする場合があります。午前中は検査などの予定が入っていることがあるので、午後にお伺いするのが無難です。
面会時間は短めに
面会は15~30分程度、長くても1時間程度で手短に済ませましょう。親しい友人や家族との面会ではついつい話し込んでしまいがちですが、長時間の面会は負担になってしまいます。見舞いの品を持参した場合は病室に着いた直後にお渡し、長居しすぎないようにしましょう。
面会人数は4人まで
大人数で押しかけると、入院している他の患者さんや病院スタッフの迷惑になってしまうかもしれません。同時に行くのはできる限り少人数で、多くても4人程度に抑えましょう。
会社の同僚や部下など、お見舞いに行きたい人が大勢いる場合は代表者だけが訪問し、他の人はメールなどでメッセージを伝えるのもおすすめです。

会話の内容にも配慮を
お相手のことを心から心配してのことであっても、お相手の病状や治療の内容について根掘り葉掘り聞いたり、過度な励ましの言葉をかけたりするのは禁物です。
「がんばって」「早く元気になって」といった言葉はつい言ってしまいがちですが、病状やお相手の心情によっては逆に負担になってしまうこともあります。「お大事にね」「ゆっくり休んでね」など、お相手が無理せず安心できるような言葉をかけるといいでしょう。
相手が眠っていたら起こさない
もしも訪問したときにお相手が眠っていたら、起こさずそっと退室しましょう。「せっかく来たから少しは話したい」と思ってしまいますが、決して無理やり起こしたりしてはいけません。持参したお見舞い品は、ナースステーションや付添人の方にお預けして帰りましょう。
お見舞金・お見舞いの品物の予算

お見舞い金やお見舞いの品物には相場があり、相手との関係性によって金額が変わってきます。会社の上司など目上の方に現金を贈るのは失礼に当たるので、同程度の金額のお見舞い品を用意しましょう。
お見舞いを渡す相手 | 金額相場 |
親・祖父母・きょうだい・近しい親戚 | 5,000~10,000円 |
友人・知人・ご近所の方 | 3,000~5,000円 |
会社の同僚 | 3,000~5,000円 |
会社の部下・後輩 | 5,000~10,000円 |
会社の上司など目上の方 | 3,000~10,000円(現金NG) |
贈り主が学生の場合は、上記の相場にとらわれず3,000円程度でもかまいません。
お見舞金を入れる封筒の選び方・書き方・包み方
お見舞金を贈るときは、入れる封筒の種類や書き方にもマナーがあります。一般的なお祝いや不祝儀とは違う部分があるので、ひと通りチェックしておきましょう。
お札は旧札を用意する

結婚式などのお祝いでは新札を使うのがマナーですが、お見舞いのときは旧札を用意します。お見舞いやお悔やみのお札にキレイな新札を用意するのは「あらかじめ用意していた=不幸を待ちわびていた」と思われてしまうためです。
とはいえ、あまりにシワだらけで汚れているものは失礼になりますので、少し使用感がある程度のものを選びましょう。万が一手元に新札しかない場合は、一度折り目を付けてから包みます。
お札の向き

お札は取り出したときに封筒の表側から肖像画がすぐ見える向きで入れます。これはお祝い事(慶事)のときと同じ向きですが、「喜ばしいこと」としてではなく「早く元気になるように」という前向きな意味が込められています。
封筒は「熨斗(のし)」がないものを選ぶ

お札を入れる封筒は「紅白の結びきりかあわじ結び」または「水引なし」のものが適しています。「病気やケガを繰り返さないでほしい」という願いを込めるものなので「蝶結び」は避けましょう。さらに、必ず「熨斗(のし)が付いていない」ものを選ぶのがポイントです。
熨斗はお祝い事にのみ使われるものであるため、お見舞い金に使うのはマナー違反になります。「黒白・黄白・銀」の水引は葬儀などの不祝儀用なので、水引の色にも注意しましょう。選び方に自信が持てない場合や、事故・流産・重篤なケガなどネガティブな理由での入院には水引なしのものを選ぶのが無難です。
封筒の書き方

表書きには「御見舞」「お見舞」などと書き、水引の下(水引がない場合は下部中央)に贈り主の名前をフルネームで書きます。筆記用具は筆か筆ペンがベストです。「お見舞い」など4文字の表記は「4=死」を連想させるので避けます。
お見舞いの品物の選び方
お見舞いのときに品物を贈る場合は、どんなものを選ぶかも大切なポイントです。一般的なお見舞いの品といえばお花や果物が思い浮かびますが、衛生面や食事制限の関係で持ち込みを禁止されている場合もあります。事前にお相手や入院先の病院にNGアイテムがないか確認しておくといいでしょう。
また、フラワーギフトはお見舞い品の定番ではありますが「縁起が悪い」といわれるものや、香りが強すぎるもの、花粉が多く周りを汚すものなどは避ける気遣いも必要です。
- ユリ:香りが強く花粉が多い
- ツバキ:花が首から落ちるので縁起が悪い
- キク:葬儀などの弔事を連想させる
- シクラメン:「死」「苦」を連想させる
- 鉢植え全般:「根付く=寝付く」を連想させる
お見舞いの手土産に人気のジャンル
お見舞いの品として人気が高いものを、選び方のポイントとともにまとめました。どんなものを選べばいいか迷ったら、次のものから選ぶと失敗がなくなるでしょう。
お花

お見舞いには向かない種類もあるものの、やはりお花はお見舞い品の定番です。上記の不向きな種類を避けるのとともに、花瓶が必要になる花束やスペースを取る大きなものは選ばないように注意しましょう。
そのまま飾れるアレンジメントや、水やりなどの手間がかからないプリザーブドフラワー・ハーバリウムなどがおすすめです。店舗で購入する場合は、店員さんにお見舞いの品であることを伝えてアドバイスをもらうといいでしょう。
お菓子や果物

お相手の好きなお菓子や栄養満点の果物は、お見舞いの品の定番。ただし、病気や薬の関係で食事に制限がかかっている可能性もあるので注意しましょう。
果物を持参する場合は、切り分ける手間がかかるものは避け、缶詰タイプのものや、食べやすい状態にあらかじめ加工されたものを選ぶと喜ばれます。お菓子の場合も同様で、一度に食べる量が調節しやすく手やベッドを汚しにくい個包装のものを選びましょう。

お茶やコーヒー

NG食材が多い方や、甘いものがあまり好きではない方におすすめ。爽やかないい香りのするお茶は、慣れない環境で不安定になりがちな気持ちを落ち着かせてくれます。ただし、カフェインが体調に悪影響を及ぼす可能性があるため、ノンカフェインのものを選ぶと安心です。
ゼリーやジュース

甘いものに制限はないけれど、あまり食欲がないという方に。喉越しよくツルッと食べられるゼリーは、胃腸にもやさしく手軽に水分と栄養を補給できます。栄養価の高いりんごやみかんなどをたっぷり使ったジュースもおすすめです。
退屈しのぎになるもの

入院中は多くの時間をベッドの上で過ごすことになります。病状が比較的安定している場合、持て余した暇をつぶせるようなものが欲しくなるものです。小説、クロスワード、編み物、マンガなど相手の好みに合わせて選ぶと喜ばれるでしょう。
お相手第一で考え、マナーを守ってお見舞いしよう
心の込もった贈り物は、病気やケガと闘うための大きな活力になるはず。少しでも早い回復を願いつつ、マナーを守ってお見舞いに伺いましょう。